「最高のリハビリ」について考えてみる(後編)

 《「最高のリハビリ」について考えてみる(後編)》です。

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 前編は先輩の金言と「最高のリハビリ」を考えるきっかけを語り、実質ここからが私が考える「最高のリハビリ」になります。

 一口にリハビリ、リハといっても色々な種類がある。回復期か維持期か、脳卒中か骨折か。それらに対するベーシックなリハを学びますが、同じ状況でも患者さん(以下、患者)の望む目標は異なるし、複数疾患の併存も当たり前。教科書はリハの指針となってもそのまま適応することはできません。

 患者が望む目標やニードを叶えるのが最高のリハなら、それは患者毎に異なる。リハの主体は患者本人です。例えば身体機能は杖歩行が妥当でも「何も使わず歩きたい」という人もいます。
 しかし転倒をはじめ事故は防ぐべき。リハとしては「こっちの方がいいんだけどな」と思うこともあります。
 そして「こっちの方がいい」というのは、リハ以外の専門職も同じはず。様々な専門職がチームで一つの医療福祉を提供するのですから。患者-専門職間だけでなく、専門職-専門職間にもすれ違いはある。
 また患者が専門職の言う「こうしたらいい」を断る理由を探るため、患者の生活歴も考えます。専門職は患者が求める「なにも使わずに歩きたい」の理由とそこに伴う感情を知らないから。

 そんな風に考えた頃……こんな風に思いました。

「仮に患者がリハとか医学とか、諸々全ての知識を完璧に持ってたら、専門職が介在する余地なくその人にとって最高の医療福祉になるのでは?」

 ここまで来るともはや医療福祉サービスを提供する必要すらないかもしれません。非現実的な仮定でも理論上は仮定できる。この時、患者と専門職はイコールで結ばれて、両者の知識と経験のギャップは消えます。

 ※人間は一人じゃないから関係性が必要とか、手術とか他者がいなきゃとかについてはここでは省きます。

 理論上の仮定でも「患者が全ての知識技術を得る」が「最高のリハビリ」なら、そこに向かって進まない手はない。
 そのための手段が、「専門職の思考と体験知を患者に提供する」ことだと思うのです。単に「転倒予防のために杖がいい」じゃない、その言葉の周囲に隠されている沢山の体験知を伝え、患者が持つ歴史や価値観と混ぜ合わせてもらう。その上で患者自身に最高の判断をしてもらう。

 専門職の専門性は技術や知識だけじゃない、思考形式そのものにもある。その提供が、一つの良質なサービスではないかと思うのです。

 皆さんの考える「最高のサービス」とは、どのようなものでしょうか?

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この記事を書いた人

関東在住の理学療法士。地域病院で急性期病床、地域包括ケア病床、介護療養病床の院内リハビリ、訪問リハビリテーションを経験。
現在は訪問看護事業所にて訪問リハビリテーション業務に従事中。

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