ケアプラン作成と認定調査の視点の違いが面白い

「できることを探すケアプラン」
「できないことを探す認定調査」

私が以前勤めていた施設では、入所者の認定調査をその施設のケアマネジャーがおこなっていました。
ケアマネジャーの本来業務であるケアプラン作成と認定調査で、同じスタッフが同じ利用者を180度違う視点で見ることに面白さを感じ、まとめました。

ケアプランは、介護保険サービスを提供する際にケアマネジャーが中心になって作成する計画書です。
生活の課題や目標、サービス内容などが記載されており、サービス事業所はこのケアプランに沿ってサービスを提供することで、介護報酬という対価を得ています。
ケアプランを作成していない施設は、運営基準違反として介護報酬の返還や、一定期間新規入所の受け入れ停止などの厳しい処分を受けることになります。

ケアマネジャーがケアプランを作成する際に注意する点は、「その人のできることを探す」ことです。
病気や障害があっても自立した生活を続けるためには、その人の残っている力を使ってほしいと考えます。

例えば以下のような視点です。

  • ベッドから車椅子に移る際に、すべてを介助するのではなく、手すりを適切な位置に設置して、一人でも車椅子へ移れるようにする
  • 服に腕を通すのは難しいけど、ボタンだけは自分でやってもらう

その人のできることとできないことを明らかにして、できることに着目し、自分でやってもらう計画を立てていきます。

一方で、その人のできないことに着目するのが認定調査です。
認定調査は、その人の介護度を決める際に行う調査です。
この調査をもとに、「介護にかかる手間」を数値化し、コンピューターで仮の介護度を算出します。
その後、介護認定審査会で正式に介護度が決定されます。

「サービス量を増やしたい」「施設入所を考えている」といった場合、介護度をあげたいと考える家族やケアマネジャーは多いです。
そのため、調査中に本人が「できる」と言ったことでも、調査後の家族への聞き取りで「あぁは言っていたけど本当は介助している」と修正することはよくあることです。
あくまで事実の範囲内で…

実際の業務の場面では、見方によってその人の人物像も大きく変わります。
ケアプランを作っているときは「朝になるとカーテンを開けてくれて、食事は見守りがあれば自分で食べられるおじいちゃん」だったとします。
それが認定調査の場面では、「カーテンを開けるときに他の利用者から”早すぎる”とクレームが来ないか、トラブル回避のための見守りが必要。食事中も遊び始めないか見守っていないといけないおじいちゃん」になってしまうのです。

ひとつ怖いなと思ったのは、直接介護するスタッフが普段どういう視点でその方を見ているのかによって、その方への関わり方が変わってしまうのではないかという点。
できることはやってもらう視点をもてているか、安全のためにできることでもできないと決めつけてその人の生活を押さえつけていないか、ということに気をつけなければならないと感じました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

さとひろのアバター さとひろ ケアマネ・社会福祉士ライター

特別養護老人ホームの生活相談員。介護職員やケアマネジャーも含めて約20年の経験あり。施設に勤めながら、ライターとして介護・福祉系の記事を執筆。
【保有資格】
社会福祉士・公認心理師・ケアマネジャー・介護福祉士・第二種衛生管理者など

目次