介護の仕事を続けられている理由

「自分が関わることでその人のできることが増えていく」
介護福祉士として働き始めて2年目にこのことに気づき、ここまで21年間介護の仕事を続けることができています。

僕は特別養護老人ホームの生活相談員です。
介護福祉士としての経験は8年あり、それからはケアマネジャーや生活相談員をしてきました。
子どもが3人いるなか、収入面に不安を感じ、副業でライターとしても活動しています。
3K(きつい・きたない・きけん)と言われる介護の仕事を続けるきっかけとなった体験談をお話しします。

介護福祉士2年目の頃は、シフトごとに同じ仕事を繰り返す日々に嫌気がさしていました。
当時から「生活リハビリ」を提唱する三好春樹さんの考えに共感し、積極的な離床や生活リハビリなど、できる範囲で少しずつ実践していました。
けれど、集団的なケアが常識となっている現場では、個別ケアの有効性を先輩方になかなか理解してもらえずにいたんです。

自分が学んだことを職場で活かすことができず悶々としていたころ、肺炎で入院し、食事が摂れなくなった利用者さん(Aさん)が退院してきました。
寝たきりで、声をかけても目をこちらに向けるだけ。
食事もほとんど摂れない状況だったため、看取り目的で退院してきたとのこと。
医師からは「数日で亡くなってしまうだろう」と言われており、個別ケアをする状況ではありませんでした。

そんなある日、夜勤の巡回でAさんの居室へ行くと「トイレに連れていってください」と声をかけられました。
退院3日目にして、初めてAさんが発した言葉でした。
普段なら「おむつしてるから大丈夫ですよ」と言っていたかもしれません。
ですが、なぜか一緒に夜勤を組んでいた先輩を説得し、Aさんをトイレにお連れしました。

病院でも1ヶ月以上寝たきりで、すっかり立てなくなっているAさんでしたが、2人で抱えながらなんとかトイレに座ってもらうと、10秒もしないうちに”シャーーーッ”と勢いよくおしっこがでました。
驚いてAさんを見ると「ふぅ、ひさしぶり」とにっこり笑っています。

翌日からは車椅子に座る時間を作るようにし、無理のない範囲でトイレにも行きました。
そのタイミングで、食事も少しずつ摂れるようになり、数日で亡くなると言われていたAさんは、1年以上生きてから施設で亡くなりました。

この1件から、それまで抑えていた生活リハビリへの意欲が復活し、先輩たちともぶつかりながら(?)成功事例を増やしていくことになります。

  • 食事のときは車椅子から椅子に移る
  • 移乗介助のときは端座位をキープする時間を作る
  • 便秘の人は頑張ってトイレに連れていく
  • 寝たきりの人でも全員個浴に挑戦
  • とにかく話しかけて笑わせる(免疫力があがるそう)

若さゆえ、猪突猛進し利用者さんに負担をかけてしまったケースもあることは否めません。
しかし、流れに任せて日々の業務に追われるのではなく「自分で考えてその方に合った方法を探す」。
これこそが介護の楽しみなのだと、実感できた貴重な時期でした。

退職も考えていた僕が、その後約20年介護業界で働き続けられました。
今後現場に戻ることはまずありませんが、貴重な体験を与えてくれたAさんに感謝です。

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この記事を書いた人

さとひろのアバター さとひろ ケアマネ・社会福祉士ライター

特別養護老人ホームの生活相談員。介護職員やケアマネジャーも含めて約20年の経験あり。施設に勤めながら、ライターとして介護・福祉系の記事を執筆。
【保有資格】
社会福祉士・公認心理師・ケアマネジャー・介護福祉士・第二種衛生管理者など

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