理由がなければ人は行動しない

私が勤務した認知症型グループホームで体験したはなし。

その施設は1フロア9人が生活できる2階建てのグループホームです。認知症型という名前がついているため、ほとんどの方が認知症を患っています。

社会人2年目で配属された勤務先でしたが、それまでも認知症の方のケアに関わっていたため、さほど抵抗は感じませんでした。

とはいえ、入所施設での認知症ケアは未経験で、夜勤で関わるのも初めてだったんです。

そんなある日、私は2階のフロアで夜勤の当番でした。

夜勤は夕方16時から翌朝の10時まで。この施設では、夜勤中1フロアに職員が1人だけなので休憩は「休めそうな時に休む」というものでした。そんな環境なので、うたた寝をしてしまうこともしばしば。そんな中、事件が起きます。

私はいつも通り各部屋の「巡視」を行っていました。巡視とは、夜間に問題なく入眠されているか確認するための見回りみたいなものです。部屋を順々に巡視していくと、寝ているはずの女性が1人見当たりません。空のベッドを見た私の額から一気に冷や汗が出てきました。

「え?どこに行ったの??」

どんどん焦りが出てきましたが、ここは落ち着くしかないと思い、深呼吸。そこまで広くない施設なので、各部屋を順々に見て回りました。そうすると2階のフロアから1階へと降りる階段前の扉が半開きになっていたのです。

「まさか!?鍵閉めていたのになんで?」

急いで階段を降りました。すると施設の玄関前のイスに座っていらっしゃったのです。

安心するのと同時にふと気になったので、なぜ玄関前にいたのか聞いてみました。

「朝のラジオ体操があると思ってここで待っていたの」

女性がいうラジオ体操とは、この施設で毎朝行なっているラジオ体操のことです。女性を発見した時間は明け方だったこともあり、ラジオ体操を楽しみに待ってくれていたのだと納得したのを覚えています。

認知症の人は「理解できないことをする」と、介護職ではない友人がよく話しているのを聞きます。正直私もそう思っていました。でもそうではなかった。

介護において「話を聞くこと」の大切さと「理由がないと人は行動しない」ということを教えてくれた。そんなお話しでした。

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この記事を書いた人

かきざきのアバター かきざき 介護福祉士(現役12年目)

一般の大学を卒業後、介護士として12年間勤務。2022年からWebライターとして活動開始。介護現場のリアルな記事執筆を中心に、福祉・医療・健康分野を専門として活動。他にも、Instagramのデザイン、ライティングなどの投稿作成、SNS運用も可能。

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