「あの子にもう来て欲しくない」
この言葉は筆者が初めての短期実習で、患者さんから言われた言葉です。
この時、初めて患者さんから「拒否」されるという体験をしました。
面と向かって言われたなら、その場で改善する努力ができたかもしれません。
しかし、患者さんと私を指導してくれていた先生がやり取りしている言葉を、カーテン越しで聞いてしまったんです。
当時は、患者さんから拒否された原因がわからず、衝撃と戸惑い、拒否されたことによる悲しみでいっぱいになり、宿舎で泣きはらしてしまいました。実習を経験している方であれば程度の差はあれど、同じような経験をしているのではないでしょうか。
そんな私ですが、失敗や成功を重ねて、今でも理学療法士を続けられています。
そこで今回は、患者さんとの関わり方を見つめ直すきっかけとなった拒否の経験を、実習生時代のエピソードを交えて紹介していきます。
この文章を読んでくださった方の気づきや、背中を押すきっかけとなれれば幸いです。
筆者は東北地方の病院で勤務する理学療法士です。
経験年数は13年目で、多くの患者さんのリハビリを行ってきました。
理学療法士として長年働いていると、患者さんから拒否されることは少なくありません。
抱えている病気の影響で認知面や精神面に障害があり、他者の言葉を受け入れられない方もいらっしゃいます。
けれど、病気の影響だけでなく、医療者側の問題で拒否につながっているケースも少なくないんです。患者さんへの対応が適切でなかったり、コミュニケーション不足で行き違いが発生していたりと、現場のスタッフであれば誰もが目にしたことがあると思います。
特に、実習生時代の私は自分のことしか考えられておらず、患者さんの気持ちや身体の状況に向き合えていませんでした。
例えば、患者さんの筋力や関節の動きを記録することばかりに気を取られ、患者さんへの声がけを怠り黙々と検査・測定を行っていました。
その光景を見ていた指導者から指摘を受け、患者さんへの声がけを怠らないように心がけましたが、それまでの私の対応に患者さんが不満をもっていたのか、会話が続かないことが多くありました。
それ以後も患者さんと信頼関係の上手く構築できず、職員や指導者からは辛辣な言葉をかけられることもありました。
そして、冒頭のカーテン越しの場面に戻ります。
真っ先に湧き上がってきたのは「私が患者さんに嫌われてしてしまったんだ……」という感情でした。
けれど、そのあとすぐに「患者さんから拒否されると検査や評価ができないから、実習で不合格になってしまう……」という、自分本位な不安が強くなったんです。
その時は、私を指導してくれていた先生が患者さんとの間を取り持って下さり、無事に実習を終えられましたが、大きな後悔と反省が残りました。
改めて思い返してみると、その方に合わせた話題の提供や話し方ができていなかったように思います。また、指導してくれた先生や実習先の職員、患者さんに「良い学生と思われたい」と考えて行動し、担当の患者さんに対する配慮に欠け、信頼関係を築くことを怠っていたのでしょう。
はじめて患者さんに拒否された体験は、私にとってツラい思い出であると同時に、多くの気づきを与えてくれました。
その後この体験は、長期実習や理学療法士になった私に大きな影響を与えてくれるのですが、その話はまた次回、お話しできればと思います。