初めて「ADL」を意識した話

 筆者はPTとなって8年目、数字だけを見れば中堅と言えるかもしれません。
 PTはリハビリをして対象者の生活の質の向上に貢献する職業。今でこそ患者さん・利用者さんの生活のことを意識するようにはなっていますが、学生の頃、あるいは新人の頃は身体機能に目を向けることが多かった。実習指導者、あるいは先輩、いろんな人に注意を受けました。
 どうして学生の頃は身体機能ばかりに目を向けてしまうのか? 逆に言えば、筆者を含めそういった人たちはどうして臨床に出てから生活に意識を向けるようになるのか?

 それは、学校では教えられても実感しにくい理学療法士の「役割」がカギになってくると思います。

 筆者が新卒で就職したのは地域の中核病院でした。入院してくる患者の多くは「○○病を発症して他院に入院、病気は改善したがADLが戻らずサービス調整も兼ねて転院してきた」という経緯を持っていた。そこでは「この人が今後どこまで何をできるようになるのか、どんな生活ができるのか」という見極めが重要な要素だったのです。
 多くの患者さんは施設ではなく家に戻ることを望んでいる。リハビリ職は医師や家族に患者さんのADLの予後や可能性を伝えます。リハビリ職が、患者さんが地域生活に復帰できるか否かの最終ラインに関わっていました。
 こうなると無責任なことは言えません。患者さんの1日の生活や動線、1週間のスケジュール、趣味や行動範囲に至るまでを把握することは、学校で学ぶ身体機能の評価と同等以上に重要なものだったのです。
 そして学生時代に学ぶ知識は身体機能やリハビリとしての知識が多く、こうした「身体機能以外に目を向ける」という考え方はやや後手に回っていました。筆者も学生時代は重要なことだと理屈では理解していても、重要であるという実感はなかったと思います。

 リハビリ職は単にリハビリを提供するだけが仕事じゃない。専門家として、患者家族に自分の知見を伝え、また患者さんが望む生活をする手助けをする職業なのです。

 学生や新人の皆さん。ぜひ、こうしたリハビリ職の役割や責任を意識してみてください。単に学ぶだけだった知識の一つ一つに、意味が見えてくると思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

関東在住の理学療法士。地域病院で急性期病床、地域包括ケア病床、介護療養病床の院内リハビリ、訪問リハビリテーションを経験。
現在は訪問看護事業所にて訪問リハビリテーション業務に従事中。

目次