「系統的学習」と「個別問題学習」
今回は、言語聴覚士国家試験の学習方法における重要なポイント、特に「系統的学習」と「個別問題学習」の違いについて詳しく見ていきましょう。
みなさん、「木を見て森を見ず」という言葉をご存知ですよね。実は、この言葉は国家試験の学習方法を考える上でとても重要なヒントを与えてくれるんです。では、なぜこの話から始めたのか、一緒に考えていきましょう。
まず、「系統的学習」と「個別問題学習」、それぞれの特徴を整理してみましょう。
系統的学習とは、教科書や体系的な参考書を中心に、知識を順序立てて学んでいく方法です。例えば、失語症について学ぶ場合、脳の構造から始まり、言語機能の局在、失語症の分類、各タイプの特徴、評価方法、そして治療アプローチへと、順を追って学習していきます。これは言わば「森」全体を見渡すような学習方法です。
一方、個別問題学習は、過去問や問題集を解きながら、そこで問われている個々の知識を身につけていく方法です。これは「木」一本一本を詳しく見ていくような学習方法といえます。
ここで気をつけなければならないのが、どちらか一方に偏りすぎると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があるということです。
それぞれの方法の問題点
まず、個別問題学習に重点を置きすぎる場合の問題点を見てみましょう。確かに、多くの問題を解くことで、出題パターンや解法のコツは身につきやすくなります。でも、それだけでは断片的な知識の寄せ集めになってしまいがちになります。
例えば、「ウェルニッケ失語の特徴は?」という問題が出たとき、「流暢な発話で復唱障害がある」という答えは覚えていても、なぜそうなるのか、他の失語症とどう関連しているのかがわからない。これでは、少し形を変えた問題が出題されたときに対応できません。
一方で、系統的学習に偏りすぎる場合も注意が必要です。確かに、体系的な理解は大切です。でも、それだけでは実際の試験で求められる解答力が身につきにくい面があります。
なぜでしょうか?それは、国家試験では「知っている」だけでなく、「解ける」ことが求められるからです。例えば、何度も出題されている問題では、問題としての難易度が高くても過去に解いていることがヒントとなる場合があります。時間が限られている実際の試験では時間短縮も大きなカギになります。このような力は、系統的な学習だけでは十分に養うことが難しいのです。
では、どうすればいいのでしょうか?
答えは、両者のバランスを取ることです。系統的学習で知識の土台をしっかり作りながら、個別問題学習でその知識を試験に対応できる形に練り上げていく。この両輪があってこそ、効果的な試験対策が可能になります。
具体的には、次のような学習サイクルをお勧めします:
- まず系統的学習で基礎を固める。
- 学んだ範囲の問題を解いて、知識の定着を確認する。
- 解けなかった問題や曖昧だった部分を、再度系統的に学び直す。
- より応用的な問題に挑戦する。
このサイクルを繰り返すことで、体系的な理解と問題解決力の両方を身につけることができます。私たちの予備校では、系統的テキストと過去問題を提供しています。
さらに、学習の過程で「つながり」を意識することも大切です。例えば、ある症状について学んだとき、「これは他のどんな症状と関連があるだろう?」「この症状が出る原因は?」といった具合に、常に知識と知識をつなげていく意識を持つことです。これにはチューターとして伴走してくれる人がいると心強いですね。そういった意味で我々の予備校では個別指導を行っています。もちろん個別指導は他の予備校や在籍している学校の先生も重要視しているので、質問の機会があるならしっかり活用することが重要です。
こうした学習アプローチについて、次回は具体的な教材選びという観点からお話ししていきたいと思います。どの教材をどのように組み合わせれば効果的な学習が実現できるのか、実践的なアドバイスをお届けする予定です。
言語聴覚士を目指すみなさんにとって、国家試験の学習は確かに大変な道のりかもしれません。でも、系統的学習と個別問題学習をうまく組み合わせることで、より効率的で効果的な学習が可能になります。一歩一歩、着実に力をつけていってください。
次回は「効果的な教材選びのポイント」について、詳しくお話ししていきます。