「dysarthriaに対する統合的徒手言語治療」(IMSTD)のポイント解説①

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dysarthriaに対する統合的徒手言語治療の基本戦略

「dysarthriaに対する統合的徒手言語治療」(IMSTD)は、発話障害の一種であるdysarthriaに対して効果的な新しい治療法です。この方法は、従来の言語療法とは異なるアプローチを取っています。

人間の発話システムは主に3つの制御メカニズムで成り立っています:

  1. 聴覚フィードバック制御
  2. 体性感覚フィードバック制御
  3. フィードフォワード制御

子供が言葉を習得する際は、主に聴覚と体性感覚のフィードバックを使います。自分の声を聞き、舌や口の動きを感じながら、正しい発音を学んでいきます。しかし、成人の発話では、主にフィードフォワード制御が働きます。これは、事前に計画された動きを素早く実行する仕組みです。

IMSTDの特徴は、この成人の発話メカニズムに着目した点にあります。従来の方法が聴覚フィードバックを使った再学習を重視するのに対し、IMSTDは体性感覚フィードバックを活用します。具体的には、発声発語器官(口、舌、喉など)に対して徒手的な刺激や位置修正を行います。

この治療法の目的は、発話に関わる筋肉が収縮・弛緩しやすい状態、つまり「発話のレディネス」を作ることです。例えば、タッピングなどの刺激を与えて伸張反射を引き起こし、それと随意運動を組み合わせることで、発声発語器官の動きを改善します。

IMSTDの主な特徴は以下の通りです:

  1. 体性感覚フィードバックを重視
  2. 徒手的な促通手技の使用
  3. 発声発語器官別の体系的なアプローチ
  4. 治療に必要な評価方法の包含

ただし、発声発語器官の中には反射的な筋収縮を利用できる部位とそうでない部位があるため、部位に応じて適切な手技を選択することが重要です。

このアプローチは、脳卒中後の四肢の運動麻痺に対する治療法からヒントを得ています。そこでは、体性感覚フィードバック刺激と随意運動を組み合わせることで効果を上げています。IMSTDはこの考え方を発話障害の治療に応用したものと言えます。

IMSTDは、成人のdysarthria患者に対して、より効果的かつ効率的な治療を提供することを目指しています。従来の方法とは異なるアプローチを取ることで、患者の発話能力の改善を図ります。

次は、日本語の特性と訓練アプローチについて考えてみましょう。

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この記事を書いた人

樋口 直樹のアバター 樋口 直樹 言語聴覚士

言語聴覚士国家試験対策予備校SAKUSAKUスクールマネージャー、徒手的言語聴覚療法研究会代表、株式会社GLANZ PLANNING CEO

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